「この本は、戦後まもない日本で人気のあった『ブロンディ』というアメリカのマンガをとおして、戦後日本におけるアメリカのイメージをさぐった本である。敗戦直後の貧しい日本を経験した人々が、当時のアメリカへの憧れの思い出として、しばしば『ブロンディ』に言及する。そこで、戦後日本におけるアメリカの生活イメージの象徴として『ブロンディ』が取り上げられる。……本書から導かれるアメリカニゼーションとは、『ブロンディ』のイメージは、当時の日本人が日本的にアメリカを解釈したものだということである。一般化すると、文化の受容は、受容する側の独特の変容をともなうという、カルチュラル・スタディズなどでよく取り上げられる命題に帰してしまうが、本書は、当時の日本人の関心を、知識人によるマルクス主義と、より一般的な関心としての科学技術と民主化として特定したことに意味がある。……本書は、興味深い素材を通して、人々の認識の分析にアプローチした好著である。構成も配慮され、文章もわかりやすい。本書によって、人々の認識の分析が、社会意識を分析する際の、重要で興味深い問題であることを、より多くの人々が気づいてくれればよいと思う。